講義

2012年07月29日 11:03

神戸大地球惑星科学専攻での集中講義「宇宙化学・宇宙鉱物学」.凝縮実験の話をという有り難いリクエストをいただき,最近,実験室での時間が増えたこともあって,それを沢山話したかったのではあるが,いきなり実験の詳細を話しても意義も何もわかってもらえないだろうとも思い,実験の話は最後に回して,「物質」を扱う宇宙科学についてじっくり話す講義スタイルに.前任地の地球惑星物理学科では,ともすれば学生が「物質」の重要性を理解しないままに,計算機の中に箱庭の自然をつくって満足してしまいかねない心配もあって,物理の言葉で物質科学(地球化学・鉱物学・岩石学)を語る講義をいつかやりたいと思っていたので,これは良い機会と,専門性の高い実験の部分は控えめにして,基礎からじっくりの講義をやってみることにした.7.5 コマ分の講義は,1) 自然界の階層構造と構造形成に働く力の話から始め,2) 太陽系の元素・核種組成の特徴を説明するための 3) ビッグバン元素合成,恒星内核反応を説明しながら,反応の平衡・非平衡の重要性も話した上で,4) 銀河の化学進化のなかに太陽系を位置づけ,5) 金属元素のキャリアとして宇宙を旅するダストを形成するための熱力学(平衡凝縮論)・6) ダストを観測するための赤外分光の原理とこれまでの観測の概略を話し,7) ダスト形成の非平衡論,それで最後に 8) 実験惑星科学におけるダスト形成実験として,70年代からの実験の結果,長所短所を話して,この10年近くの我々のダスト形成実験について言及する,という流れ.量子力学,相対性理論,力学,電磁気学,原子核物理,物性物理,統計力学,熱力学,反応速度論といった物理の基礎をちりばめた講義になった.スライドをあまり使わずに板書中心でおこなったので,学生さんは大変だったと思うのだが,なにか残ってくれれば嬉しい限り.

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